求人の27.5%が改定後の最低賃金未満
2026年5〜9月の募集条件を分析 パート求人では44.8%、フルタイム求人では17.4%
ハローワーク求人の提示賃金を2026年度の地域別最低賃金と比較すると、分析対象の27.5%が改定後の水準を下回ることがKIJIの集計で分かった。2026年5〜9月に受理された約171万件のうち、時給で比較できる約164万件を調べた。該当する求人は約45万件に上る。
パート求人では44.8%と半数近くに達し、月給を時給に換算したフルタイム求人でも17.4%だった。最低賃金引き上げに伴う募集条件の見直しは、月給制の求人にも及ぶ可能性がある。
比較したのは改定前の募集条件と改定後の最低賃金である。その後の条件変更や実際の支払賃金は反映しておらず、法令違反の件数を示すものではない。
対象は2026年5〜9月受理分。月給制の求人は、提示月給の下限を推計した月平均所定労働時間で割り、時給に換算した。
パート求人の34.5%が改定前の最低賃金から2%以内
パート求人の34.5%は、提示時給が改定前の最低賃金以上で、上回る幅が2%以内にとどまっていた。これに対し、2026年度の地域別最低賃金は全国加重平均で1,177円となり、前年度から56円、約5%上がる。
提示時給が改定前の最低賃金近辺に集中していたため、基準の引き上げによって多くの求人が新たな基準を下回る。44.8%という比率は、こうした賃金分布を反映している。
採用時の時給引き上げは、既存従業員との賃金差にも影響する。経験や勤続年数に応じた処遇を維持するため、募集条件の変更が賃金体系全体の見直しにつながる可能性もある。ただし、本集計は既存従業員の賃金を含まず、人件費の増加額を推計したものではない。
フルタイム求人も17.4%が基準を下回る
フルタイム求人では、提示月給の下限を、就業時間と年間休日数から推計した月平均所定労働時間で割って比較した。改定後の基準を下回る割合は17.4%で、建設業の正社員求人に限ると15.1%だった。
提示月給が同額でも、年間休日数や所定労働時間によって時間当たり賃金には差が生じる。月給の額面だけでは捉えにくい募集条件の違いが、時給換算によって表れる。
| 求人の区分 | 改定後の最低賃金を下回る割合 |
|---|---|
| 時給で比較できる求人全体 | 27.5% |
| パート求人(提示時給) | 44.8% |
| フルタイム求人(月給を時給に換算) | 17.4% |
時給換算には求人票の就業時間や年間休日数を用いた。休憩時間、手当の内訳、変形労働時間制などの扱いによって推計値が変わるため、個別求人の適法性を判断するには追加の確認を要する。
青森県は39.2% 東京都との差は17.5ポイント
改定後の最低賃金を下回る求人の割合は、青森県が39.2%、秋田県が38.7%、岩手県が37.3%だった。東京都は21.7%、千葉県は20.9%で、青森県と東京都の差は17.5ポイントに上る。
| 都道府県 | 改定後の最低賃金 | 改定後の最低賃金を下回る割合 |
|---|---|---|
| 青森県 | 1,090円 | 39.2% |
| 秋田県 | 1,090円 | 38.7% |
| 岩手県 | 1,090円 | 37.3% |
| 東京都 | 1,280円 | 21.7% |
| 千葉県 | 1,195円 | 20.9% |
改定後の最低賃金を下回る割合の上位3県と、首都圏の2都県。47都道府県の地図と一覧は「詳細分析」に掲載。
最低賃金の額が相対的に低い地域でも、改定後の基準を下回る求人の比率は高い。改定の影響を測るには、基準額に加え、募集賃金と最低賃金の差を把握する必要がある。
地域別の比率には、業種や雇用形態の構成差も含まれる。企業の賃上げ余力を直接示すものではなく、地域固有の要因を検証するには業種・雇用形態をそろえた比較が必要となる。
募集条件の見直しは月給制にも
今回の集計では、改定後の基準を下回る割合に、雇用形態や地域による差が見られた。人材サービス会社にとっては、求人を業種・地域別に整理し、募集条件の見直しを提案する際の判断材料となる。
フルタイム求人でも17.4%が該当したことは、月給制の募集条件を時間当たり賃金で検証する意義を示す。最低賃金への対応範囲を把握するには、パート時給に加え、提示月給と所定労働時間を一体で捉える必要がある。
都道府県別・業種別の内訳
本文で扱った比率を、47都道府県、業種、発効日ごとに示す。都道府県と業種を選ぶと、年間休日、賃金、パート時給と改定後の最低賃金の関係が表示される。
| 都道府県 | 改定後の最低賃金 | 発効日 | 判定した求人 | 改定後の最低賃金を下回る | 改定前の最低賃金を下回る | パート時給の中央値 | 年間休日の中央値 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 青森県 | 1,090円 | 2026年10月29日 | 2万2587 | 39.2% | 8.7% | 1,060円 | 107 |
| 秋田県 | 1,090円 | 2026年10月14日 | 1万8430 | 38.7% | 7.7% | 1,056円 | 111 |
| 岩手県 | 1,090円 | 2026年12月1日 | 2万1268 | 37.3% | 7.7% | 1,060円 | 111 |
| 徳島県 | 1,103円 | 2026年11月1日 | 1万1579 | 35.1% | 4.4% | 1,100円 | 110 |
| 山形県 | 1,092円 | 2026年10月30日 | 2万1757 | 34.8% | 6.2% | 1,080円 | 113 |
| 鳥取県 | 1,090円 | 2026年10月3日 | 1万1141 | 34.6% | 6.0% | 1,080円 | 111 |
| 宮崎県 | 1,085円 | 2026年10月24日 | 2万672 | 34.5% | 6.6% | 1,085円 | 108 |
| 鹿児島県 | 1,090円 | 2026年10月25日 | 2万8725 | 33.7% | 5.3% | 1,090円 | 108 |
| 和歌山県 | 1,101円 | 2026年10月3日 | 1万2517 | 32.9% | 4.2% | 1,100円 | 110 |
| 佐賀県 | 1,095円 | 2026年11月15日 | 1万5707 | 32.8% | 5.2% | 1,100円 | 109 |
| 長崎県 | 1,087円 | 2026年11月2日 | 2万1614 | 32.6% | 5.5% | 1,100円 | 109 |
| 高知県 | 1,086円 | 2026年10月29日 | 1万2238 | 32.4% | 4.8% | 1,100円 | 110 |
| 山口県 | 1,101円 | 2026年10月8日 | 2万3701 | 31.7% | 4.9% | 1,100円 | 111 |
| 島根県 | 1,092円 | 2026年10月10日 | 1万5261 | 31.5% | 5.2% | 1,092円 | 112 |
| 福島県 | 1,094円 | 2026年10月16日 | 3万1615 | 31.4% | 5.8% | 1,085円 | 111 |
| 大分県 | 1,096円 | 2026年11月1日 | 1万9470 | 31.2% | 4.8% | 1,100円 | 110 |
| 岡山県 | 1,104円 | 2026年10月2日 | 3万2178 | 30.7% | 3.7% | 1,100円 | 111 |
| 新潟県 | 1,108円 | 2026年10月1日 | 4万3535 | 30.6% | 4.9% | 1,100円 | 115 |
| 静岡県 | 1,154円 | 2026年10月15日 | 4万9300 | 29.9% | 3.4% | 1,154円 | 113 |
| 熊本県 | 1,092円 | 2026年12月1日 | 2万7125 | 29.8% | 4.7% | 1,100円 | 110 |
| 北海道 | 1,131円 | 2026年10月1日 | 7万1485 | 29.6% | 5.7% | 1,135円 | 111 |
| 広島県 | 1,141円 | 2026年10月11日 | 4万2475 | 29.3% | 4.3% | 1,145円 | 110 |
| 群馬県 | 1,120円 | 2026年10月3日 | 2万5998 | 28.6% | 3.6% | 1,120円 | 113 |
| 岐阜県 | 1,121円 | 2026年10月1日 | 3万1781 | 28.4% | 3.4% | 1,125円 | 113 |
| 山梨県 | 1,113円 | 2026年11月1日 | 1万5825 | 27.8% | 2.8% | 1,117円 | 114 |
| 京都府 | 1,180円 | 2026年11月16日 | 3万6911 | 27.5% | 3.0% | 1,200円 | 111 |
| 愛媛県 | 1,093円 | 2026年11月1日 | 2万4692 | 27.5% | 4.2% | 1,100円 | 110 |
| 神奈川県 | 1,279円 | 2026年10月1日 | 8万8458 | 27.4% | 3.0% | 1,300円 | 116 |
| 三重県 | 1,143円 | 2026年10月1日 | 2万5941 | 27.4% | 3.1% | 1,150円 | 114 |
| 栃木県 | 1,125円 | 2026年10月1日 | 2万9704 | 27.2% | 3.5% | 1,128円 | 112 |
| 長野県 | 1,117円 | 2026年10月2日 | 3万8733 | 27.2% | 3.2% | 1,120円 | 115 |
| 茨城県 | 1,136円 | 2026年10月18日 | 3万5759 | 27.1% | 2.8% | 1,150円 | 114 |
| 奈良県 | 1,107円 | 2026年10月4日 | 1万7788 | 26.8% | 1.4% | 1,115円 | 111 |
| 福井県 | 1,112円 | 2026年10月4日 | 1万6326 | 26.6% | 2.8% | 1,115円 | 114 |
| 福岡県 | 1,114円 | 2026年10月4日 | 6万9579 | 26.6% | 3.5% | 1,127円 | 110 |
| 富山県 | 1,119円 | 2026年10月1日 | 2万1080 | 26.0% | 2.7% | 1,120円 | 115 |
| 滋賀県 | 1,136円 | 2026年10月3日 | 2万672 | 25.9% | 2.4% | 1,150円 | 115 |
| 大阪府 | 1,231円 | 2026年10月1日 | 9万9422 | 25.8% | 2.4% | 1,240円 | 114 |
| 沖縄県 | 1,086円 | 2026年12月2日 | 1万9552 | 25.7% | 4.5% | 1,100円 | 111 |
| 石川県 | 1,113円 | 2026年10月3日 | 2万1337 | 25.6% | 2.9% | 1,120円 | 114 |
| 兵庫県 | 1,172円 | 2026年10月1日 | 6万1814 | 25.6% | 2.6% | 1,200円 | 113 |
| 宮城県 | 1,098円 | 2026年10月1日 | 3万1938 | 25.2% | 4.5% | 1,100円 | 113 |
| 愛知県 | 1,195円 | 2026年10月1日 | 8万490 | 25.2% | 3.3% | 1,200円 | 115 |
| 香川県 | 1,092円 | 2026年10月1日 | 1万9795 | 24.1% | 3.2% | 1,100円 | 110 |
| 東京都 | 1,280円 | 2026年10月1日 | 16万8709 | 21.7% | 2.3% | 1,300円 | 120 |
| 埼玉県 | 1,196円 | 2026年10月1日 | 7万3484 | 21.0% | 2.2% | 1,203円 | 114 |
| 千葉県 | 1,195円 | 2026年10月1日 | 6万3064 | 20.9% | 2.5% | 1,226円 | 114 |
都道府県と業種を調べる
データと集計方法
対象は2026年5〜9月にハローワークで受理された約171万件の求人、約25万事業所。うち約164万件で時給による比較が可能だった。月給制の求人は提示月給の下限と、就業時間・年間休日数から推計した所定労働時間を用いた。比較基準は2026年度の地域別最低賃金(全国加重平均1,177円、1,085円から1,280円まで)。求人件数は採用人数を表すものではなく、すでに募集を終了した求人が含まれる場合もある。
実際の最低賃金への適合性を判断するには、算入対象となる賃金や所定労働時間を個別に確認する必要がある。また、本分析はハローワーク求人を対象としており、日本の求人市場全体を代表するものではない。
- 求人票。2026年5月から9月までにハローワークが受理した求人を、KIJIが記録し、事業所に紐づけたもの。フルタイム、正社員、パートの区分は、ハローワークの分類に従う。
- 時給換算。月給制の求人について、提示された月給の下限を月あたりの所定労働時間で割ったもの。所定労働時間は、記載の就業時間と年間休日から求め、法定の休憩時間を差し引いている。法律上の最低賃金の判定では提示賃金に含まれる一部の手当が除かれるため、この推計は事業所側に有利な試算となっている。
- 業種。ハローワークの産業名をKIJIがまとめたもの。事業所の規模は、ハローワークが求人とともに公開する事業所情報による。
- 出典。KIJIによるハローワーク求人データの集計、厚生労働省の地域別最低賃金公表資料。
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